お知らせ

2022.1.27

嶋田聡の今週の一言

wellbeing

昔、精神科に行く人は症候に悩む人たちだった。彼らは症候を取り除こうとしたのであり、

 彼らの良好(wellness)という概念は病気でないということだった。彼らは普通の人と同じで

 あることを望んでいた。現代の「世紀の病気」に悩んでいる人々に較べると、少数者になっている。

 新しい患者たちは、自分が本当に何に悩んでいるのかを知ることなしに医者のもとへ行く。気が沈む

 とか、不眠であるとか、結婚生活がうまくいかないとか、仕事が面白くないとか、種々、そのような

 悩みを訴える。彼らにある特殊な症状が彼らの問題であり、しかもこの特殊な悩みを取り除くことが

 できるならば、彼らは良くなると信じている。しかしながら、これらの患者は通常、彼らの問題が、

 抑うつとか、不安、不眠、結婚生活とか仕事の問題ではないことがわからない。これらの種々の訴え

 の原因ははもっと深いところにあり、自分たちはある特殊な症状に悩んでいると信じている人々には、

 共通しているあるものを表現しているに過ぎない。この共通の悩みとは、自分自身からの疎外であり、

 自分の仲間からの疎外であり、自然からの疎外である。有り余るモノの中で生活していても、生が人の

 手から砂のようにくずれ落ちてしまう。本当の人生を生きているという実感や、本当の喜びがないという

 意識である。疎外に悩む人にとって、治癒は病気がないということではなく「最良の状態」(well being)

 にあるということになる。最良の状態とは、人間の本性と一致していることである。いかにして我々は我々

 内部において、また我々の仲間と、そして自然と合一を見出せるのかである。それは十分に生まれることで

 あり、自分の自覚、理性、愛する能力を自分自身の自己中心的な関与を超えて、新しい調和、世界との新しい

 合一に到達するまで発展させることである。この心境はある意味で、禅の悟りの心境に似ているかもしれない。










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